とある本屋のBLコーナーで起きた事

私は所謂腐女子で、本屋に寄れば必ずと言って良いほどBLコーナーを見にいく。最初から目当ての作品がある時もあれば運命の出会いを求めている時もあるし、買う日もあれば買わない日もある。

その日もいつものように、馴染みの本屋のBLコーナーに足を運び、本棚を眺めていた。すると高校生くらいの男の子二人組が近くを通りかかり「うわ、キモい」と言い捨てたのを耳にした。そうだよねー君達からしてみればキモいよねーごめんねーと心の中で謝った。でも好きなんだ頼むから放っておいてくれると助かる、とも思った。

暫くすると彼らはBLコーナーに戻って来た。何故か一人増えていた。元々三人組だったのだろう。私の隣に立ち「男の裸とか、うわーキモい」みたいな事をボソボソと言っているのが聞こえた。男の裸はキモいのか、なら女の裸はキモくないのかな、まぁ男子高校生だもんな、キモいのは分かったから早くいなくなってくれないかな、と思った。少ししたら彼らはいなくなった。

今思えば私もそこで物色をやめれば良かったのだが、気が付いたら彼らはまたBLコーナーへやって来た。今度は私の真後ろでまたボソボソとキモいキモいと言っていた。明確には聞き取れなかったが、私に対して言っているのかなーと感じた。事実は分からない。でも私はそう感じた。

その時手にしていた傘を振り回して彼らに殴りかかりたかった。何か用ですか?ハッキリ言ってくれないと聞こえません。そう言いたかった。でも出来なかったし言えなかった。せめてどこの学校か確認してやれば良かったかなと後になって思った。でもそんな事をしてもきっと意味は無いし、単純に三人の男子高校生が怖くて体が動かないというのもあった。

時間にしてみれば1、2分も経っていなかっただろうけど、恐ろしく長く感じた。彼らが私の後ろから去った後も暫く動けなかった。その場で泣き崩れたい気持ちを抑えて、結局何も買わずに本屋を後にした。

耐えきれず電車の中で腐女子仲間に愚痴LINEを送った。主人に付き合ってもらいカラオケでLiar!Liar!とZEROを熱唱した。涙がボロボロ流れてまともに歌えなかった。

腐女子キモい」そう言われたのは初めての事では無い。面と向かって直接言われた事もある。何かに対して嫌悪感を覚えるのは仕方ない事だし、それを口にするのだって決して罪では無いと思う。私だってきっと何処かで誰かの趣味を貶していて、誰かを傷付けているのだろう。

だがせめて、このやりきれない気持ちを落ち着かせるために脳内で彼らの三角関係BLを妄想する程度の復讐は許してほしい。

そこに萌は全く無かったし、虚しいだけだったけれどね。